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  し  け ん ど く は く
突然、芸術のフラグメントが沸々と現れてきます
バラバラなフラグメントを機を見て テーマ化整理
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私見独白」 トップ

佐 伯 祐 三 編

2006/11/13





 佐伯はガス事故までは米子を大切に思っていた。ところが、この事件以来、佐伯の心は変わっていく。米子ヴィーナス説が嫉妬心のため米子悪女説に変わっていく。次の文章を見よう。「ガスの事があってから、米子はんは 巴里の街中描かんようになりました。描けん云うてます。技が止まってしまったようです。前に来たとき住んだクラマールの方や、ブラマンクの家の方へ行きたい云います。ガスの事があってから、米子はんは巴里の街中描かんようになりました。ワシはもっぱらモンマルトルを歩いてます。今の調子やと、あと5年は生きたいな、と思います。不安です。夜恐ろしうて眠れんようになりました。あれから米子ハンが話しかけてくるけど、ワシは話しもようせんようになりました。ヤチをワシといっしょに葬ってしまうことが、ワシの心のわだかまりになりました。」


白矢

 米子はなぜ絵が描けなくなったのか?  佐伯は米子にくどくどとガス事故のことを責めた可能性がある。お前のために俺の絵は画けなくなったと責め続けたのではないか?これだけのことを書く人間が当の本人、米子に何も言わなかったことは考えにくい。

 「ガスの事があってから、米子はんは巴里の街中描かんようになりました。」
--→ これはお前のお節介で俺の絵が画けなくなった。ガスで俺を殺すつもりであったのだろうと気がふれたように怒ったのではないか?米子も佐伯の手伝いを止める気になったのではと思われる。


 「前に来たとき済んだクラマールの方や、ブラマンクの家の方へ行きたい云います。」
--→ なぜあなたはそんなことを言うの?昔のように仲良く暮したい。もう一度幸せだった頃に戻りたい。このような気持ちを表現しているともとれます。

 「不安です。夜恐ろしうて 眠れんようになりました。あれから米子ハンが話しかけてくるけど、ワシは話しもようせんようになりました」
--→ 精神に異常をきたしていることを示している。米子にしてみればなんとか佐伯をなだめ、落ち着かせようとしているのだが佐伯は心を開くことができない、すでに堂々巡りの心の閉じた状態になっている。この時点では佐伯のもっとも心配な事はヤチコの死であろう。愛する親、弟に死なれた佐伯にとって愛する子供が自分より早く死ぬということはとてつもない恐怖であったであろう。