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パルソファン図鑑

連載コラムVol.3

「本当のフレンチ」を表現する味の匠河本智之 さん  ※「ソワン」は閉店しました。

今月から登場いただくのは、フレンチレストラン想逢(ソワン)オーナーシェフの河本智之氏。
戸塚パルソ振興会の栗田昭義会長もイチオシする、味の匠を紹介します。

鎌倉駅から若宮大通りに出、鶴岡八幡宮に向かって歩いて数分。
いかにも鎌倉らしい、少し進めば新しい発見があるようなビルの2Fに、想逢(ソワン)があります。
想逢は、2012年2月に鎌倉に移転する前は、「ドゥースパンセ」の名前で、戸塚で営業していました。

栗田会長が言います。
「はじめて『ドゥースパンセ』を見つけたときは、とても嬉しい衝撃でした。オードブルの香りが、まず違う。そして岩塩の絶妙な加減。メインディッシュはオマールの香り、持ち味を十二分に引き出している。日本のフレンチのほとんどは、残念ながら『フランスっぽい料理』ですが、ドゥースパンセは『フランスの料理そのもの』でした。まさか日本で、しかも地元の近くで、本当のフレンチが食べられるなんて、思ってもいませんでした」

加えて栗田会長を感激させたのは、シェフ自らが焼き上げるパンでした。
「日本のフランスパンは現地のパンに比べて、焼くと表面がとても硬くなりがちなのですが、現地のパンは焼いても表面がサクサクでパリっとした仕上がりになります。河本さんは、パンドカンパーニュ(田舎パン)という、あまり精製されていない小麦を使ったパンを提供して、そうした本場の風合いまでを忠実に再現してくれているのです」

日本人の好みに流されず、本物を貫くフレンチシェフ。
「でも、融通が利かないというのとは違います。フレンチの枠をきっちり守りながら、ソースに味噌を使ってみるなど、日本にいるからこそ出来る工夫をしている。いつ伺っても、その度に違う引き出しを見せてくれるので、飽きることがありません」

戸塚から、鎌倉に場所を移して、新たなステージに挑戦している想逢・河本さん。
「戸塚から鎌倉まで、JR横須賀線で3駅、15分かかりません。いつでも通えるのが楽しみです」
栗田会長の、ウキウキした解説はいつまでも続くのでした。

河本智之さんは、千葉県生まれ。
自分の代わりが居ない仕事であること、良い仕事をすればすぐ手応えがあることなどから、早くからシェフを目指していました。
銀座の名店、オザミデヴァンで修行した後、フランスに渡ります。

では、フランス語は堪能だったのですか?と伺うと
「ほとんどしゃべれなかったですね」
だそうです。
「厨房で使う言葉は、日本とあまり変わりませんから、仕事中は問題ありませんでした。でも、日常の言葉がわからないんですよ」
なので、諸手続きの為に出向いたフランスの役所で大苦戦。ケガや病気のときの、病院でのコミュニケーションが一番大変だったといいます。
現地の星付きレストランで腕を磨くかたわら、別にパン店にも通い、本場フランスパンのノウハウを習得します。
帰国後、河本さんは再びオザミデヴァンに戻ります。そして2009年、満を持して戸塚にドゥースパンセを出店し、オーナーシェフとなるのです。

開業した当初の戸塚の印象を伺うと
「人の多い街だなと思いました。だいぶ都会だなと。西口再開発の完成に向けて、街が躍動していた時期だったので、その活気も感じました」

戸塚パルソの栗田会長の印象は?。
「最初に来店された時から、栗田さんとお話ししていると、『この方はフランス料理を知っているな』というのがわかりました。少しでも気を緩めると見抜かれてしまう。気持ちのいい緊張感を与えていただけたというか。常に気持ちを高められたことを、ありがたく思っています」

「そういえば」と河本さん。
「子どもが同級生という御縁で、当店の経理は、戸塚パルソの足立会計事務所さんにお願いしているんです」
不思議に御縁のある、想逢と戸塚パルソなのでありました。

「フランス料理ってわかりにくいんですよ」
河本シェフがおっしゃいます。
「日本食ならスシ、アメリカならハンバーガー、のような代表的なメニューが、フランス料理にはありません。元々フランスにあった食文化というのは、食料の保存性を第一に考えていて、味も見栄えも二の次でした。それを、ルイ14世の頃に、各国の食文化を融合して、現在のフランス料理を作り上げたのです。悪くいうと寄せ集めなんですね。フランスにしかない、というものがないんです」。

「だから逆に、フランス料理の中に日本的なものを取り入れることができるんです。私も日本の味や素材を取り入れたフランス料理を作りたいと考えています。
飲み物も、ワインだけでなく、日本酒で味わっていただくこともあります。それはフランス料理の基本的な考え方『テロワール』を大事にすることにつながります。
テロワールとは、地元の食材は、地元のものとあわせることが一番良い、という考え方です。」

想逢では、ランチ(11:30〜15:00)に「丼」を提供しています。
気軽に楽しめる金額で、あまり気取らず、フランス料理を体験してほしいと考えた結果、日本人になじみのある丼というスタイルにしたとのこと。しかし、その中身は本格コース料理のメインディッシュに劣らぬ充実ぶり。フレンチ激戦区の鎌倉で、ご当地の奥様方の評判を呼んでいます。
さらには、日本人客以上に、フランス人の観光客が見えられ、多くの方にご満足いただいているそう。
「ゴールデンウィークなどは行列ができてしまい、ご迷惑をおかけしました」という河本さん。フランス人のお客さまは、看板のフランス語の案内を見て、ご来店いただいたのでしょう、とのことですが、意外に想逢の名前は、日本好きなフランス人に知れ渡っているのかもしれませんね?

夜は17:30からディナータイムになります。
想逢のディナーは完全予約制。当日でも、ランチ時間中に声をかけていただければ対応可能、ということですが、
「当日では席が埋まっていることが多いので、出来れば、一週間前くらいには、予約していただきたいですね」
想逢・河本シェフの、本場フランス料理を堪能したい方は、余裕を持ってご予約を。

---information---

  • 想逢〜ソワン
  • 鎌倉市雪の下1-9-24小池ビル2F
  • TEL:0467-22-1051
  • ランチ11:30〜15:00
  • ディナー17:30〜22:00(ディナーは完全予約制)
  • 定休日:水曜日(木曜日はディナーのみ営業)
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