戸塚宿を行く(歴史探訪)

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戸塚パルソ通信@メール 第83号

戸塚宿を行く(歴史探訪)

vol.036-2

陸奥下向中に何があった?実方塚−2

※小倉百人一首の五十一「藤原実方朝臣」

実方塚の謎に迫る前に、藤原実方の略歴を振り返ります。

【藤原実方】960年ごろ生まれたと推測される。近衛府官吏(武官)として順調に出世していたが、冷泉天皇の勘気を被り、陸奥守に左遷。999年、任地で馬の下敷きになり死去。歌人として名高く、小倉百人一首に取り上げられた「かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを」は、清少納言との恋の歌と言われる。

「桜がり雨はふりきぬおなじくは ぬるとも花のかげにやどらん」

実方塚移築記念碑に刻まれている歌。
「桜がり(花見)の最中、突然の雨に降られたが、アタフタするのは趣のないこと。どうせ濡れるのだから『花かげ』に雨宿りしよう」というような意味で、良い歌だと大いに評判になった。ところがこれを聞いた藤原行成は「歌はおもしろし。実方は烏滸なり(歌は面白いが作者の実方はバカである)」と公言した。歌としては風流を歌った良い歌だが、実際に濡れながら花見を続けるのはバカのやることだ、という意味である。
当然ながら、言われた実方は激怒。宮中で行成を見とがめた実方は、行成の冠を投げ捨て(打ち落としたとも)恥をかかせる。
それを聞いた冷泉天皇が実方に「歌枕を見て参れ」と告げる。「歌枕」とは宮中言葉で陸奥のことだった(多くの歌枕に陸奥の地名が使われていた)。

こうして 東北に下ることになった実方は、途中の戸塚で「実方塚」を残すことになるのですが、、、、

◯藤原実方の墓説もあった実方塚

古い戸塚の名所案内には、実方塚を藤原実方の墓所と取り上げているものもあります。しかし、実際の藤原実方の墓所とされるものは、宮城県名取市に現存し、さらに横浜ふるさと歴史財団の調査でも遺物は発見されなかったため、墓所ではなく供養塔か顕彰碑であることが明らかになりました。現在では関係者(従者)が亡くなったことを悼んだ碑と伝えられています。

●「実方」姓の不思議

藤原氏の子孫は全国に波及しています。多くの場合、土地名や役職名+藤という姓を名乗ります。伊豆の藤原氏は「伊藤」、近江の藤原氏は「近藤」、遠江の藤原氏は「遠藤」、斎き(神職)の藤原氏は「斉藤」、木工助(大工)の藤原氏は「工藤」といった風になります。
なんらかの理由で戸塚に定住し、藤原姓を名乗り続けない場合、相模の藤原氏(相藤)、戸塚の藤原氏(戸藤・富藤)などと名乗るほうが、藤原氏系の苗字としては一般的です。

また、名前を与えることにはルールが色々あります。家臣が、下の名前に「実」または「方」の偏諱(上の立場の人の名前の一部をもらう)を受けることはありますが、諱(下の名前)をそのまま苗字にもらうことは、非常にレアなケースと言えるでしょう。

実方塚を見上げる

◯「実方」の持つ別の意味

ところで「実方」は、藤原実方以外の由来は考えられないのでしょうか?

(1)【実方】=「じっかた」。
「じっかた」とは、養子に出た人物から見て、実家(生家)のことを言います。現代と違って、養子縁組は「転職」程度の気軽なイメージと捉えてください。
仮説として、上倉田から他家に養子に出た人物が、なんらかの事情で、生家の采配も取る必要に迫られたことが考えられます。(生家のあとつぎが幼く、成長するまで後見人として実際の運営をするなど)
その時、上倉田の生家の領地を「実方の土地」とよび、養方(養子先)の領地と区別したことが、いつの間にか「実方」という地名として定着した可能性があり得ます。

(2)【実方】=「じっぽう」
「じっぽう」は「実宝」とも書き、仏教の教えのこと。「実方院」というお寺もあります。領地が平和であることを祈った当主が、仏教の加護に預かろうと、そのように名付けることはあり得ます。また、「じっぽう」とは「真面目・律儀」という意味もあるので、「あそこの家は真面目だな、実方な家だ」と呼ばれたことが由来になる可能性もあります。

「実方」を名字として名乗ることの不思議から、いろいろ他の可能性を考察しましたが、結局のところ、なんら確証があるものではありません。これは、小倉百人一首にもその名を残し、光源氏のモデルとも言われた平安の貴公子が我々に残した、「謎かけ」なのかもしれません。

参考資料:とみづか第42号(戸塚歴史の会)

○実方塚

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